身近な黒鉛製品」のページでは、身近な炭素製品を紹介いたしました。
カーボンは身の回りの生活用品などの原料や装置部品として色々なところで使われています。 ここでは、中々お目にかかる機会の少ない黒鉛製品、カーボン製品、グラファイト製品を紹介致します。

黒鉛製品

パワーデバイス(Power device)

半導体は主に「演算」や「記憶」といった処理を行う部品です。 同じような形をしたパワーデバイスという部品は、電力の制御や変換を主に行う部品で、 ICチップよりも、更に大きな電圧、電流を扱えるようになっている半導体の事を指します。
エアコンや冷蔵庫、電子レンジ、炊飯ジャーなどの家電製品や、ハイブリッドカーにも使われています。 特に自動車関連の分野では、自動化運転を進めるにあたり、大容量の電気による機械の制御が必要になります。 パワーデバイスは電力が大きい分、発熱温度も高く、より効果的な排熱が必要になります。 弊社では「高熱伝導率カーボン材」を使った放熱パネルや、パワーデバイスを作るカーボン冶具の製作をしております。

パワーデバイス
(Power device)

ロータリーエンジン(Rotary engine)

ロータリーエンジンは、三角形に近い形をしております。
ローターの各頂点をアペックスといい、先端に取り付けられている部品をアペックスシールといいます。 隣接する作動室との気密を保つ役割があり、エンジン内部の機密を保つために、サイドシール、コーナーシール、 オイルシール4部品で、通常エンジンのピストンリングと同様の機能があります。
アペックスシールには強度と耐熱性、潤滑性が求められており、材料にカーボンが配合された 「結合質カーボン材料」が使われています。

ロータリーエンジン
(Rotary engine)

パンタグラフ(pantograph)その2

現在のパンタグラフには「CCコンポジット(炭素繊維強化炭素)」に 銅を配合した複合材が使われるようになっています。
CCコンポジットは、黒鉛を炭素繊維で強化することで、耐久性がアップしております。 更に銅を配合することで、導電性を確保しています。
CCコンポジットのパンタグラフは、通常の黒鉛材料と違い、CCコンポジットの材料そのものを ボルトで固定が出来るほど丈夫な材料です。耐久性と合わせて、消耗部品の交換の作業効率も上がることで、 メンテナンス性もアップした材料になっています。

パンタグラフ
(pantograph)その2

医療用赤外線治療器(Medical infrared therapy device)

医療用の赤外線治療器には、カーボンの丸棒が使用されています。 製品の耐久性・酸化摩耗耐性、赤外線の放射量・赤外線の安定性と、安定した操作性から、 高性能カーボングラファイトが使われています。
弊社では、この特殊材料の取り扱いをしています。

医療用赤外線治療器
(Medical infrared
therapy device)

土鍋(Earthenware pot)

IH調理器では、陶器の土鍋、磁器の器を加熱することはできません。 土鍋やガラスなど非金属の鍋は、電気そのものが流れないためIH調理機では使えませんでした。
IH調理機の鍋のコイルに電気を流すと、金属の器と調理機の間の電磁誘導によるジュールの法則の誘導加熱で発熱…と説明すると大変なので、割愛します!
IH調理機で使えるように、土鍋業者さんが考えられたのが、土鍋と同じ高温度域で作られたカーボン材料です。 カーボンは電気が通りますので、カーボン板(鍋)自体が発熱をすることでIH調理機で使えます。
IH調理機は「誘導加熱」電子レンジは「マイクロ波加熱」で原理が違います。 ちなみにカーボンはマイクロ波を受けてもマイクロ波を透過しつつ、吸収もされて発熱もします。
★ただし、カーボンは電子レンジで使えません。

土鍋
(Earthenware pot)

ディスクブレーキ(Disc brake)

飛行機やスポーツカー、レース用のバイクなどに「CCコンポジット」のディスクブレーキが使われています。 高温の耐久性と、バネした重量を軽くすることで燃費が向上することに役立っています。
金属製のブレーキに比べ、40~50%の軽量化が出来、寿命は2~3倍に伸びます。 大型飛行機B747などでは、900kgの軽量化に繋がっています。
金属製ブレーキに比べ、カーボン製では熱伝導率が上がることで、周りの部品の放熱性、耐熱性も性能アップして使われています。

ディスクブレーキ
(Disc brake)

ロケット噴射ノズル(Rocket injection nozzle)

ロケットの火が出るノズルの部分。 物を遠くに正確に飛ばすために、複雑なR形状になっています。 弊社では、ロケットのノズルは大きいので手掛けていませんが、 平和利用されている、小型のロケットノズルを手がけさせて頂いております。 弊社では、1個からご注文を承りしているので、ロケットノズルに限らず、色んな試作品を対応させて頂いております。

ロケット噴射ノズル
(Rocket injection
nozzle)

スペースシャトルの耐熱板(space shuttle)

スペースシャトルの下側が真っ黒なのは「CCコンポジット」が張り付けられている為です。 宇宙空間では、酸素がない為、カーボンの弱みとなる「酸化」という症状がありません。 カーボンは、真空中では2,000℃、不活性雰囲気では、3,000℃程度まで耐熱性がある素材なので、 宇宙空間では、持ってこいの素材となっています。
CCコンポジットは、炭素繊維で炭素(黒鉛)を強化している素材なので、衝撃にも強い素材になっています。

スペースシャトルの
耐熱
(space shuttle)

カーボン治具使用製品

理化学ガラス製品(Rotary engine)

理科の実験で使うガラス製品全般を、理化学ガラスと言います。
理化学ガラス製品を作る職人さんは、理化学用ガラス機器製造の技能資格を持たれております。 勢いの良いガスバーナーで、ガラスを溶かしながら加工する風景は、職人仕事そのものです。 1,000度を超えるバーナーと、板やパイプのガラス材料から、色んな製品が作られています。

理化学ガラス製品
(Rotary engine)

ビールジョッキその2(beer mug)

先の「身近なーボン製品」で紹介させていた出していたビールジョッキ。 「ドイツのビールジョッキって、筋が入っていないよね?」と思われた方、観察力が素晴らしいです!
ドイツの方は、ビールを美味しく飲むために「吸水性のある多孔質グラファイト」を開発されて、ビールジョッキを作られています。 この材料はカーボンに水を含むませることで、熱いガラスがカーボンに接触した際に、水蒸気膜がカーボン型と硝子の間に出来ます。 この水蒸気膜によって、鋳型の筋がビールジョッキに転写しないようになっています。
ドイツ人の方のビールへの熱い情熱を感じる、カーボン素材です。 この材料の特許は、日本の材料メーカーが入手されています。

ビールジョッキ
(beer mug)

金の延べ棒用のカーボン鋳型(Gold mold)

金の延べ棒だけでなく、鋳物の型にカーボンが良く使われています。
金、銀、銅、アルミ、鉄、鉛、硝子、色んな材料の型がカーボンで作られており、弊社も色々な鋳型の実績があります。
弊社の得意としているカーボンの軸受け製品は、公差が厳しく製品により表面を磨く作業が必要になります。 鋳型や鋳造用のカーボン冶具は、磨きの作業が必要なアイテムが多くあります。 弊社はこの磨きの加工を、他社に技術伝授している実績もあります。 磨きの技術だけでなく、加工用の刃物も、業者を紹介することもあります。
メーカーさんが開発された新作刃物、自社で考えた加工アイデアを、色々と試してみるのが弊社の強みです。

金の延べ棒(Gold bar)

コンデンサー(condenser)

「電荷を貯める」「直流電流は通さず交流電流を通す」といったような役目を持つコンデンサー。 コンデンサーの両端についている細い線(リード線)は、カーボン冶具で作られています。 コンデンサー本体(セラミックやアルミやタンタル)を封着したりする冶具もカーボンで出来ています。
半導体やIC(集積回路)は、コンデンサーの技術の応用で、複数のコンデンサの働きを1つの部品で出来るようになっています。 半導体にパターンを組む際、通常エッジング(被膜を作り、不必要な部分を洗い流す)で作られますが、 弊社では配線(半田)の要領で作られる、極細線用の金属ノズルの製作もしております。 「黒鉛にφ0.05(50µm)の穴加工」で説明しているような、 細い穴が開けられたカーボン冶具に、精線する溶けた金属を通して作られています。

コンデンサー
(condenser)

アンプル瓶(Ampoule bottle)

注射などの薬を入れるアンプル瓶の製造も、カーボン冶具を使って作られています。 とても大きな設備を、複数台、少人数で対応されており、量産化の技術の凄さを感じます。
その装置に使われるカーボン冶具の精度と寿命が、量産機の生産性を左右する為、 素材の提案から、加工精度まで、綿密な打ち合わせが必要な部品です。
アンプル瓶製造用冶具も、弊社では対応しております。

アンプル瓶
(Ampoule bottle)

放電加工用電極(EDM electrode)

鉄などの金属製品のうち、難削材と呼ばれている材料や、形状が複雑で量産性の高い物などを作る際に、放電加工という方法により、物を作ることがあります。 金属に、スパーク(小さな雷)を落として金属を溶かし、思いの形状に加工を施す方法です。
この電極にカーボン材料が使われており、弊社でもお手伝いをさせて頂いております。

放電加工用電極
(EDM electrode)

炭素繊維系製品

レース用自転車のリム(Bicycle rim)

先日、トライアスロンをしている友人の自転車を見せて頂きました。 何と300万円もする自転車でした。
そんな高級自転車には、普段見かけない場所まで、CFRP化されており、自転車のリムまでCFRPでした。 これから益々、色んな製品がCFRP化されていくと思います。

レース用自転車のリム
(Bicycle rim)

歯科用レントゲン(Dental roentgen)

CFRPは、X線の透過率が高くレントゲン撮影のテーブルに使用されている事を「身近なカーボン製品」でお伝えさせて頂きました。
弊社では、写真の物とは形状が違いますが、歯科用のレントゲン撮影機の固定ポール(支柱)の 製作をさせて頂いた実績がございます。
また、弊社では、本来金型が必要になるCFRP製品でも「板形状の物であれば、切削加工にて1個より」 対応をさせて頂いております。開発時よりご協力をさせて頂きます。

歯科用レントゲン
(Dental roentgen)

カーボンブラック製品

カラフルタイヤ(Colorful tires)

見かけることが少ないカラフルなタイヤ。 昔は、ゴムに耐熱性を向上させる意味で、カーボンブラックが使われていました。 その為「車やバイク、自転車のタイヤは黒」というイメージがあります。
しかし、今のタイヤの耐熱性やブレーキの摺動の為に使われている主材料はSiCになっています。 SiCの色は、グレーから黒色です。そこで従来のタイヤの色に着色する為にカーボンブラックが使われています。 カラフルなタイヤでも、真っ黒なタイヤ同等の性能を持っています。
F1やGTの自動車レースで、カラフルなタイヤがもし使われるようなことがあれば 「カラフルタイヤが流行!?」するかもしれません。

カラフルタイヤ
(Colorful tires)

墨(Ink)

墨は、煤(すす)と膠(ニカワ)と香料などを練り合わせて作られていました。 中国産のものは唐墨、日本産のものは和墨と呼ばれており、製法の違いより性質も多少異なります。 今では、カーボンブラックを用いて作られる墨もあり、化石燃料由来の隅を「洋煙墨」や「改良煤煙墨」「工業煙墨」と呼ばれています。

墨(Ink)

その他のカーボン製品

オイルその2(oil part2)

オイルの添加剤に「カーボンとは」で紹介しておりましたフラーレンが配合されているオイルがあります。 フラーレンは球体で、摩擦係数がほぼ0になる材料です。 フラーレンC60は0.71nmのとても小さい分子です。 小さいボールが、金属の隙間に入り込むことで摩擦を少なくし、 エンジンへの負担や音の低減をしてくれます。

オイルその2
(oil part2)

ポンプ(pump)

ポンプの各部品を組み立てる際に、機密を保つために、部品同士の間に緩衝材を挟みます。 昔はコルクが使われていたり、紙材だったり、ゴムや石綿が使われていました。
ケミカルポンプなどの耐熱性や薬品耐性が必要な場合「膨張黒鉛シート」が使われています。

ポンプ(pump)

チャコールフード(Charcoal food)

イカ墨をパスタの生地やソースの色付けに使われてる「イカスミパスタ」も有名ですが、炭入りのスパゲティーやケーキも販売されています。 竹炭やココナッツの炭を使われている食品全般を「チャコールフード」と呼ばれるようになっているそうです。 炭が体内の余分な物質を吸着して外に出すことで、デトックス効果があるといわれています。

チャコールフード
(Charcoal food)

「隠れた黒鉛製品」ではお目にかかる機会の少ないカーボン製品、グラファイト製品を紹介しました。 次の「グラファイト開発品」では、カーボンに関わる開発されたばかりの技術や、 開発された素材の応用方法などを紹介いたします。